2011年3月31日〜4月1日 :被災地に行ってきました!
 今週の講演の予定が地震のために延期になったので、昨日の早朝弘前を出発し、岩手最北端の久慈市をスタート地点として、被害の大きかったいくつかの地域の仮設診療所、産婦人科診療所、避難所などを訪問し、仙台まで車で行ってきました。往復約980kmの行程になりましたが、自分の頭の中で考えていた以上に収穫が多くありました。その1泊2日の行動を簡単に書いてみます。少しでも皆様の活動の参考になれば幸いです。
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【今回の目的】
 被災地域にはたくさんの医療関係者が支援に入っていますが、産婦人科の医師は非常に少ない、あるいは皆無に近いのではないでしょうか。しかし、避難所や災害の混乱により女性が性的被害を受ける可能性はかなりあります。このことを多くの方に分かっていただき、どう対応すればいいのかを調べることが目的の一つです。
 そして万が一性被害にあったときの対応なども婦人科以外の医師や看護師、保健師に説明し、実際の緊急避妊ピルの配布を行うことも目的としました。
 さらの、産婦人科医として性被害だけでなく、婦人科的なトラブルに対する相談ができることも分かってもらいたいという思いもありました。
 このような目的を持って行って参りました。
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 まず準備したものは、自分の行動の目的を少しでも分かってもらうために文書を作成しました。緊急避妊ピルとしてプラノバールも持参し、その飲み方の注意や、服用した後の月経開始時期の目処などを記載した文書も準備しました。また中・高校生への性教育の時に生徒に手渡していた私の電話番号を記載した電話・メール相談カードも持参しました。
また数日前に岩手日報に掲載された避難所などでの性被害に関連する記事もたくさん印刷して持参しました。
岩手県、宮城県の海岸に近い産婦人科診療所、病院の医師名と電話番号を地図に記入したものを作成しました。
もちろんガソリンも20リッタータンクで積んで行きました。
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【2011年3月31日】 
 久慈市で開業している弘前大学出身の竹下産婦人科を訪問し、久慈の状況を確認。竹下先生の診療所では震災直後から出産があり、青森県の地方紙にも紹介されていました。久慈市の被害は他の地域よりも軽かったとのこと。
 久慈市を出て野田村に入るといきなり津波被害の現場が目に飛び込んできました。宮古市まで一気に南下し、宮古市の松井産婦人科を訪問し、松井先生に準備した文書を渡し、訪問目的をお話ししました。松井先生自身も産婦人科医として、避難所などの女性の性被害に対して何かできないか、と考えていたとのことで、いきなりの訪問だったのですが、とても喜んでいただけました。それだけでなく、宮古警察署に電話を入れ、避難所での性被害にも関心を持ってくれるように話していただきました。松井先生と相談したことは、宮古市を出ると、産婦人科医が全くいない地域が続くことです。特に宮古市に隣接する山田町、大槌町が心配だということになり、山田町で臨時診療所となっている山田病院を訪問しました。
  山田病院自体もものすごい被害を受けていましたが、何とか使える部屋で昭和大学の派遣チームが医療活動を行っていました。その医師にも準備してきた文章を手渡し、もしもの時の緊急避妊ピルの説明を行い、プラノバールと説明書、電話相談カードを渡してきました.非常に協力的で、次の医療支援チームにもそのことを申し送ってくれると言ってくれました。
 どの仮設診療所にも産婦人科医はいませんので、プラノバールを手渡したら、その後は私が電話で説明などもする体制を取ることも話してきました。
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  山田町を出て、町長まで津波で亡くなられた大槌町に向かいました。大槌高校が診療所と避難所を兼ねていましたので、大槌高校に向かいました。行く途中はテレビでは見ていましたが、現実にみると信じられないほどの
惨状でした。
  大槌高校の仮設診療所には昨日の昼まで青森県医師会のチームも入っていたのですが、私が着いたときには帰路についた後でした。その代わりに、弘前に近い青森県の五所川原市というところの基幹病院である西北中央病院のチームが派遣されてきていました。廊下を歩いて診療所となっている教室の方に歩いていたところ、「蓮尾先生ですか?」と声をかけられビックリしましたが、西北病院の医師の方でした。と言うことで、ここでもビックリするほどスムーズに目的を理解していただき、他の支援チームにも申し送ってもらえることになりました。山田病院と同じように、プラノバールや資料も手渡してきました。
 大槌高校には診療所だけでなく避難場所にもなっていましたが、何とまだ500名前後が生活をしていました。避難所の環境はかなり厳しいものがあり、プライバシーの確保などとはほど遠いものがありました。レイプということではなくても、女性がこのような環境下で長期間の生活をすれば、何らかの性的なダメージを受けるのではないかと思わせる状況でした。そこで、この高校に派遣されている保健師の方々に面会を申し込んだところ、喜んで応じてくれ
ました。
 愛知県から派遣されている2名の保健師の方々でしたが、自分たちもその点が心配だったということで、生活上の注意など相談することもできました。また、岩手日報の記事も大変参考になるとのことで喜んでいただきました。早速その記事に私の電話相談カードなども加えて、女子トイレに掲示するものを作成すると言ってくれました。
 余談になりますが、保健師のお一人が今回の派遣に際して月経がぶつかるのでピルの長期連用を行い、とても快適に過ごすことができていると話してくれ、しばしピル談義で盛り上がりました。やはり、ピルは避妊薬というだけでなく、女性が快適な生活、十分な活動をする上で重要な役割を果たすツールだということを改めて感じた次第です。
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 さらに南下して釜石、大船渡を通り、陸前高田に行きました。陸前高田病院は20年くらい前に勤務経験があった病院でしたが、壊滅的な被害を受けていましたが、建物のかたちだけは残っていました。しかし、陸前高田市全体で残っていた建物は病院を含めて数カ所しか無く、津波で残骸もすべて持っていかれたのでは、と思うほど何もない荒野が広がっていました。もちろんナビを使いながら運転していたのですが、「30メートル先を右折」とナビが言っても、そこに道路すらないのです。
 岩手県は非常に面積の大きな県です。最南端の陸前高田で夕暮れが迫り、道路状況も悪く、そのまま宮城県の海岸線を行くのをあきらめ、山側に入り、一関経由で仙台に着きました。
 仙台ではやっと確保できたビジネスホテルに宿泊しましたが、避妊教育ネットワークの仲間である北野原先生と会うことができました。仙台市内の開業ですが、先生ご自身がレセコン、電子カルテなど、かなりの被害を受けたそうです。
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【2011年4月1日】
 名取市や岩沼市方面を車で走ってみましたが、仙台空港付近の被害のすごさにはビックリしました。
それでも、今回被災地を通りながら感じたのは被害の大きさだけでなく、想像を超えるほどの被害を受けながらも、たくさんのトラックやクレーン、パトカー、緊急車両などが動き回り、必死で復興に向け動き始めている姿でした。やっぱり日本は凄い、どのくらいの年月がかかるかもしれませんが、必ず復活するだろうと信じることができたのも収穫でした。そのためにも、それぞれができることを、できたら連携を持ちながら実行する事が大事だと感じました。
 私は女性医療ネットワークや避妊教育ネットワークなどに参加していますが、まさにこのような会が活動すべき時だ
と思った次第です。
 今回、何カ所かを訪問してみて感じたことは、産婦人科医として他の科の支援医師や看護師、保健師などの方々に直接説明できればかなり理解を得ることができること。警察にも地元の産婦人科医を通して話をしてもらうとインパクトがあることなどでした。
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  長文の割には参考になる点は少ないかもしれませんが、何らかのお役に立つことができれば幸いです。
今回の災害は本当に信じられないくらい長期的な対応が必要です。みんなで継続的な活動をしていきましょう。---------------------------------------------------------------------------------------------
【今回持参した文書の一部です】
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【文書1】
被災地や避難所地域で産婦人科医療活動をお続けの先生方へ

 弘前女性クリニック  蓮尾 豊

 去る3月11日に発生しました東日本大震災では、我が国がこれまでに経験したこともないような大きな被害が起きてしまいました。また先生の地域でも言葉で表せないような大きな被害を被られたにもかかわらず、既に医療活動を再開されていることに対し、驚きとともに心からの敬意を覚えております。

 この度の災害では、同じ被災県には入っていても、先生方の受けた被害に比べれば私が住んでいる弘前市は実害がほとんどない状況でした。こんな状況ですので、大変な被害を受けられた地域に対して自分でできることは何かを考えて参りました。私はもちろん日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会の会員でありますが、「避妊教育ネットワーク」と「女性医療ネットワーク」の会員としても活動をしておりますので、このような災害時の混乱のなかで女性が受ける可能性のある性被害などの防止と、万が一性被害を受けた場合、さらに深い悲しみとなる希望しない妊娠の防止などに関する働きかけを行うことが、今自分にできることではないかという結論に達しました。

 具体的には、被災地や避難所での性被害防止の働きかけと、性被害に遭ってしまった女性に対し、その時点でベストの対応ができるような手助けをしたいと思います。とは言え、私自身がその女性の地域で診療所を開設しているわけではありません。そこで、被害の相談があった女性を先生方の医療機関に紹介する役割を担いたいと考えています。私自身以前から24時間対応の婦人科電話相談を実施していますので、この電話相談を利用することと、国境なき医師団日本会長の黒崎伸子先生のご協力により、国境なき医師団日本の緊急デスクの医療担当の看護師にも私の電話相談の情報を伝えていただいていますので、これらを利用して相談が来る可能性があります。緊急避妊ピルは服用後の嘔気、嘔吐などの副作用の発現率が高く、また次回の月経が来るまでの期間は人様々ですので、その間の不安に対する相談機関としての役割も担うことができればと思っています。また、性被害だけでなく婦人科に関するあらゆるトラブルに対しても24時間対応で応じていますので、何かの折には患者さんに私の電話相談カード、電話番号をお渡し下さい。

 この度は何の予告もなく、この様な勝手な申し出をしましたこと、どうかお許し下さい。先生の地域の1日を早い復興を心から願っております。

    24時間婦人科電話相談ダイヤル(弘前女性クリニック) 

080−3328−0709

    この電話番号はどなたにお知らせいただいてもかまいません。

    電話相談は無料です。
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【文書2】
緊急避妊ピルを服用の方へ

服用後気になる事があれば遠慮なく電話を下さい。

弘前女性クリニックの蓮尾が24時間対応します。080−3328−0709

電話相談は無料です!
1.緊急避妊には現在の日本ではプラノバールという中用量ピルを使用します。

まず2錠を飲みます(あなたの場合は  時頃)、その12時間後に残り
  の2錠を飲みます。
2.当日と翌日くらいに吐き気がある方もいますが、長くは続きませんので
  我慢して下さい。
  もしもお薬を飲んで2時間以内に吐いてしまった場合には効果が低下
  することがありますので連絡を下さい。
3.一般的には飲んだ後、数日後にいつもの月経より少量の出血があります。
  少量でも3日以上続けば月経と考え、妊娠にはならなかったと考えて
  大丈夫です。
4.人によっては飲んだ後すぐに月経が無く、むしろ予定月経よりも遅れること
  があります。月経予定を14日以上過ぎても月経が来ないときには婦人科を

  受診して下さい。お近くに婦人科がないときには電話を下さい。
5.緊急避妊ピルは100%の効果はありません。あくまで緊急避難的に使う方法です。
  是非この機会に本当の低用量ピルの服用を考えて下さい。
【注】上記の説明はプラノバールを使うヤツペ法です。間もなく日本でも使用できるようになる
   ノルレボ錠とは異なります。

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【文書3】